カーボンニュートラルを実現する技術の開発

カーボンニュートラルに向けて、石炭を利用する電力部門及び非電力部門のCO2排出削減や、CCUS/カーボンリサイクル等の技術開発における産官学の協力体制の構築を進めることが重要です。当機構は、CO2排出抑制に係るコストの削減と同時に、CCUS/カーボンリサイクル等の分野でのイノベーションを目指す"革新的クリーン・コール・テクノロジー"の開発に取り組んでいます。


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カーボンフロンティア機構の取組紹介

① 広島県大崎上島におけるカーボンリサイクル(CR)実証研究拠点の整備(NEDO)

カーボンリサイクル活動の推進

CR実証研究拠点(広島県大崎上島)では、大崎クールジェン(石炭ガス化燃料電池複合発電実証事業)で分離・回収されたCO₂(実ガス)をパイプラインで搬送し、そのCO₂を原料とした、燃料や化学品、鉱物などを製造する各種試験を実施します。

同拠点は、「実証研究エリア」「藻類研究エリア」「基礎研究エリア」の3区域で構成され、「実証研究エリア」では、コンクリートや燃料、化合物、化学品を製造するパイロット試験を行い、「藻類研究エリア」においては、微細藻類由来のSAFSustainable Aviation Fuel; 持続可能な航空燃料)の研究開発を実施します。また、「基礎研究エリア」には共用棟と研究棟があり、共用棟は分析室を設け、さらに、研究者の議論の場や来客対応・PR活動に活用し、研究棟の6室の研究室ではCR技術の要素研究が進められています。

当機構は、同拠点で実施される全ての研究開発支援のため、施設の運営・管理を実施するとともに、研究成果を国内外に発信しCR事業の価値向上や普及に貢献します。また、研究棟ではダイヤモンド電極を用いて、CO2を電気化学的に還元し、ギ酸を製造する研究開発を実施します。

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② 産業間連携によるカーボンリサイクル技術実装推進事業(NEDO)

産業間連携によるカーボンリサイクル事業の構築

国内石油化学コンビナート地域では、複数の産業が存在し様々な製品を作り出しています。

本調査では、大規模産業集積型の特定コンビナートを対象に、そこに立地している複数の産業が連携して、既存インフラや未利用エネルギー、CO2や水素(H2)等を融通活用することで、CO2排出量の大幅な削減や、低コスト化につながるカーボンリサイクル事業の実現可能性を調査します。さらに、複数のCO2供給者と利用者間での連携を想定したCO2マネジメント事業者に求められる役割についても検討し、当該事業の実装を推進します。(石油コンビナート高度統合運営技術研究組合、対象コンビナートに立地する企業との共同実施)

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③ アンモニアマイクロガスタービンを活用した先進農業技術実証(環境省)

アンモニアを使った農業のゼロエミッション化

農業用ハウスに必要な電力や温水を、アンモニア専焼50kWマイクロガスタービン(MGT)を使って供給する技術実証事業です。

ハウス内における最適栽培管理システムを開発し、気候条件を問わず周年での栽培を実現し、特に寒冷地で従来は灯油等を使用していた農業において、CO2を排出しないアンモニアを燃料としたMGTコジェネレーションシステムで最適な熱電供給を行うことにより、農業のゼロエミッション化と収穫の増産の両立を目指します。

さらに本事業では、CO2フリーアンモニア(再生エネルギーからのアンモニア)の利用を含めた事業化計画の策定も行います。
(トヨタエナジーソリューションズを代表事業者として、JCOAL、秋田農販、秋田県立大、産業技術総合研究所の5機関で実施)

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④ 環境配慮型CCUS実証拠点・サプライチェーン構築事業(環境省)

海上からのCCS実証を目指した検討

国内では、CO2発生源と貯留地点が近傍に存在するとは限りません。その場合、貯留地点までCO2を輸送することが必要となります。本事業では、発電所で分離回収されたCO2を圧縮液化し、出荷設備によりCO2輸送船に積み込み貯留地へ運んだ後に、海上から海底下へCO2を圧入し、貯留されたCO2の挙動等をモニタリングする実証の検討を行います。

液化CO2の輸送や海上からの圧入方法、貯留地点の調査、掘削方法、モニタリング技術などの検討、ならびに経済面・環境面における利点や課題・リスクを整理します。(カーボンフロンティア機構、全9組織のコンソーシアムを組成して実施中)


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CO2分離・回収は別事業で実施中であり、その設備からのCO2提供を受ける予定

⑤ 固体吸収剤によるCO2分離回収実証(環境省)

グローバルな地球温暖化対策への取組

アミン固体吸収剤によるCO2分離回収技術は、従来型の吸収液法に比べエネルギー消費が少なく、発電所の排熱エネルギーを利用して吸収剤を再生することが可能です。

米国ワイオミング州のIntegrated Test Center(ITC)に実証試験設備を建設し、隣接するDry Fork石炭火力発電所の実排ガスを使用したCO2分離回収技術の環境影響評価の実証事業を進めています。
(川崎重工業との共同実施)

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Dry Fork発電所全景と実施試験場所(ITC

⑥ 早生樹による木質バイオマス燃料の高効率生産システム(NEDO)

地産・地消のバイオマスで地域創生へ貢献

国内バイオマス発電の課題は、バイオマスの安定供給と調達コストの削減です。

福島県いわき市にて、早生樹(コウヨウザンなど)による国産木質バイオマス燃料の安定供給(「エネルギーの森」創生)を目指し、高効率生産システムの開発を進めています。既存スギ林を早生樹に置換え、GIS(地理情報システム)や優良系統苗のクローン化技術も適用し、燃料材生産に特化した早生樹の皆伐・更新システムの開発を進め、地産・地消のバイオマス燃料で地方経済の活性化に貢献します。
(遠野興産、古河林業との共同実施)

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(出典:林野庁「森林・林業白書」より)「エネルギーの森」創生のイメージ図

⑦ バイオマスガス化・FT合成による小規模分散型SAF製造技術の実現可能性調査(NEDO)

地域のバイオマスから小型ガス化・FT合成炉でSAFを製造

近年、藻類やバイオマス由来の低炭素原料から製造されるSAFSustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)の開発が国際的に活発に進められています。昨今のエネルギー情勢を踏まえると、海外の原料だけに依存するのではなく、国内の原料も活用した幅広いSAF調達のための技術開発が必要です。

SAF製造の方法はいくつかありますが、バイオマス等をガス化した合成ガスを原料として、FT(Fischer-Tropsch)合成を利用した方法では、ガス化炉・FT合成炉の小型化が重要とされています。小型化によってプラントコストが引き下げられ、安定で安価な分散型の燃料サプライチェーンを確立できる可能性があります。

本調査では、バイオマスガス化・FT合成に注目して、小規模なSAF製造プラントと地域分散型を目指したサプライチェーンの確立の実現可能性を調査し、これらの社会実装に向けた課題を検討します。

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⑧ CO2ダイレクト利用ジェット燃料合成によるカーボンリサイクルの国際共同研究開発(NEDO)

持続可能な航空燃料(SAF)の開発を目指す

発電所や製鉄所から排出されるCO2から合成燃料を製造するには水素が必要ですが、再生可能エネルギー由来電力・水電解法からの水素製造はコスト高が課題です。再エネ・水素の代替として、バイオマスや廃プラ等をガス化したシンガス(H2CO)を用いて、CO2を含む幅広い合成ガスからジェット燃料を製造するため、触媒やプロセス、システム開発、並びに事業化検討を実施します。本研究は、富山大学、タイのチュラロンコーン大学との国際共同研究として取り組んでおり、当機構はプラスチックとのバイオマスの混合原料を用いたガス化からの水素製造や、調達から利用までの全体サプライチェーンの検討を実施します。
(富山大学、タイ・チュラロンコーン大学との共同実施)

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⑨ ケミカルルーピング燃焼ポリジェネレーション技術開発(NEDO)

バイオマス燃料を適用して、グリーン電源・グリーン水素を製造

ケミカルルーピング燃焼技術は、酸化鉄などの金属酸化物中の酸素を使って、石炭やバイオマスを燃焼させる技術です。燃焼に伴い熱を発生し蒸気タービンを廻し発電するとともに、燃焼に用いた酸化鉄に水蒸気を添加すると、水素が発生します。また、排ガスは脱塵するとCO2と水蒸気なので冷却すれば容易にCO2を分離回収することができます。したがって、バイオマスを燃料とした場合、グリーン電力、グリーン水素の製造が可能です。大阪ガスとJCOAL共同で300KWの大型コールドモデルの試験装置を用い、各種運転データの取得、システム評価を実施するとともに、ホットモデルの試験装置の設計を進めています。

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300KW大型コールドモデル試験装置(大阪ガス Carbon Neutral Research Hub
(大阪ガスとの共同実施)

⑩ 浅海域における石炭灰の利活用促進(NEDO)

海域の生態系を利用した地球温暖化対策

日本は海に囲まれた世界6位の海域面積を有する海洋国家です。これら豊かな海域を利用し、石炭灰を原材料としたブロック、基質、人工石材を浅海域に設置することで、藻場再生、アサリの漁場改善、洋上風力等構造物の洗掘防止等の多様な用途開発が可能です。更に、設置したブロック、人工石材には海洋生物の生育環境改善、海域環境保全等の効果が期待でき、将来的には、大気中のCO2を生態系に取り込む機能の増進に寄与できます。

実用化に向けては、実海域実証試験を経て、経済性及び事業性評価を行うとともに、CO2吸収・固定量のポテンシャル評価も併せて実施していきます。(電中研、東京パワーテクノロジー、東洋建設との共同実施)

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海藻に産卵されたハタハタの卵(秋田県岩舘漁港)


⑪ 石炭灰利用・震災復興資材の供給から事業拡大(経済産業省ほか)

地産・地消の石炭灰製品で土木・環境分野に貢献

福島県南相馬市で、石炭灰(フライアッシュ)を用いた土木資材の製造・販売事業(共同出資の福島エコクリート株式会社を設立。2018年製造開始)を実施しています。福島県内の石炭灰リサイクルを目的に、路盤材代替品ORクリート(Odaka Revive (Recycle)クリート)を年間約9万トン製造しています。ビジネス展開の一環として、バイオマス発電所からの燃焼灰の活用にも取り組んでいます。

石炭灰混合材料の利用方法に係る土木学会技術指針の発刊(20213月)を受け、土木・環境分野における石炭灰有効利用製品の普及拡大を図りながら、炭酸塩化技術を適用しCO2削減など積極的な取組みを推進しています。(日本国土開発・親和商事との共同事業)

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福島エコクリート工場全景

ORクリート①.JPG製品写真 (ORクリート)