フライアッシュ
石炭灰の85~95%
- フライアッシュは、ボイラ内で燃焼によって生じた溶融状態の微細な灰粒子が、高温の燃焼ガス中を浮遊した後、ボイラ出口における温度低下に伴い球形微細粒子となったものであり、電気集塵機で捕集されています。
- 主な含有元素は、シリカとアルミナです。
- 主な構成相は、ガラス相(非結晶質(Al-Si))、結晶質シリカ(SiO2)、結晶質アルミノケイ酸塩(3Al2O3・2SiO2)です。ガラス相は、水酸化カルシウム等アルカリとの反応性を有しています(ポゾラン反応)。
- 直径0.1~300μm程度の球状粒子が大半です。
- 未燃炭素を少量含みます。
- 上記した特徴を利用し、セメント分野、土木分野、建築分野、農林・水産分野と幅広い分野で有効利用されています。
- セメントコンクリートに混ぜる用途(混合材・混和材)として用いるフライアッシュについては、「JIS A 6201 コンクリート用フライアッシュ」が規定されています。
(出典:日本フライアッシュ協会のホームページ)
物理的性質
フライアッシュは微細粒子であり、これを電子顕微鏡で見ると球形をしています。このため、フライアッシュを用いるとコンクリートやモルタルの施工時の流動性が増大するので、この性質を活用して土木・建築分野で利用されています。
【色と形状】
フライアッシュの色は、大部分が灰白色でありますが、灰中の未燃炭素が増えるにしたがって黒味を帯びています。また、鉄分が多いとわずかに赤味も帯びます。
(出典:日本フライアッシュ協会のホームページ)
【密度】
フライアッシュの密度は、1.9~2.3g/cm3程度の範囲です。なお、かさ比重は0.8~1.0程度です。
【粒度分布・粉末度】
フライアッシュの粒度分布は0.02mm以下で約50%、0.02~0.1mmが38%程度となっており、0.1mm以下の粒径が約88%を占めています。
また、粉末度は、指標として網ふるい方法(45μmふるい残分)とブレーン方法(比表面積)があり、フライアッシュⅡ種では「網ふるい方法」の場合40%以下、「ブレーン方法」の場合2,500cm2/g以上と規定されています。
(出典:石炭灰ハンドブック)
化学的性質
フライアッシュの主成分はシリカ(SiO2)とアルミナ(Al2O3)であり、この2つの無機質で全体の70~80%を占めています。その他の成分は酸化第二鉄(Fe2O3)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)などです。セメントに混合すると、セメントの水和の際に生成される水酸化カルシウムと反応(ポゾラン反応と呼ばれている)して、耐久性と水密性を向上させる働きをします。
フライアッシュは上述した各化学成分が単独で介在するものではなく、溶融によって化合物となって存在しています。その結晶質鉱物の主なものはクォーツ(SiO2)、ムライト(2SiO2・3Al2O3)、マグネタイト(Fe3O4)などです。また、非結晶質のガラス分が多量に存在します。
フライアッシュ中の灰分は、根源植物中の無機質と石炭生成時に混入した粘土や岩石からなっているため、産炭地によって異なりますが、セレン、フッ素、ホウ素、ヒ素等の重金属類が微量含まれています。
表 フライアッシュの化学組成例(単位:%)
化学組成例(%) | ||||
---|---|---|---|---|
SiO2 | Al203 | Fe2O3 | MgO | CaO |
40.1~74.4 | 15.7~35.2 | 1.4~17.5 | 0.2~7.4 | 0.3~10.1 |
(出典:石炭灰ハンドブック)
【強熱減量】
フライアッシュの強熱減量は、主に未燃炭素の比率の指標を示す値であり、次項のメチレンブルー吸着量とも密接な関係があります。フライアッシュⅡ種では5%以下に規定されています。また、1999年のJIS改定では、強熱減量に代えて、未燃炭素含有率の直接測定で代替しても良いこととなっています。
フライアッシュの未燃炭素は、含有量が5%程度以下であれば混合したセメントの凝結硬化に影響を与えることはほとんどないですが、未燃炭素の細孔へAE剤や減水剤が吸着され、その効果を減殺することがあります。未燃炭素とコンクリートAE剤の使用量との関係は必ずしも直線的とはいえませんが、メチレンブルー吸着量とAE剤使用量とはほぼ直線的に変化し、AEコンクリートの空気量を調節するに当たって品質管理上の重要な尺度となるものです。
フライアッシュの構造が球状であるのに対し、未燃炭素は細孔構造を持っています。そのため、未燃炭素が多く含まれるフライアッシュは単位重量当りの表面積が多くなり、メチレンブルーの吸着量も増加します。
なお、メチレンブルー吸着量はJIS A 6201の規格値としては定めておりません。
(出典:日本フライアッシュ協会のホームページ)
JIS規格
- コンクリートに混ぜる用途として用いるフライアッシュ(セメント混合材・コンクリート混和材)では、利用目的等に応じ4種類の品質が「JIS A 6201 コンクリート用フライアッシュ」に規定されています。
- フライアッシュⅠ種:強熱減量が3.0%以下、粉末度が高いです。
・混和により、コンクリートの高強度化、流動性付与、アルカリ反応抑制効果等が得られます。初期強度発現性も、フライアッシュ無混和の場合と遜色ありません。
・分級により製造されています(分級細粉)。生産拠点が限定されています。 - フライアッシュⅡ種:強熱減量が5.0%以下、粉末度は中程度です。
・混和により、コンクリートの水和発熱抑制、長期強度改善効果が得られます。流動性付与、アルカリシリカ反応抑制について、無混和の場合と比較し十分に効果が発揮されています。
・主に分級により製造されます(分級細粉)。全国的に流通しており、広く利用されています。 - フライアッシュⅢ種:Ⅱ種よりも強熱減量が高いです。
・コンクリートの水和発熱抑制、アルカリシリカ反応抑制、長期強度改善において、Ⅱ種と同等の効果がありますが、コンクリートの流動性と空気連行性に対して配慮が必要です。
・Ⅲ種として生産・流通しているものは、ほとんどないのが現状です。 - フライアッシュⅣ種:Ⅱ種よりも粉末度が低いです。
・水和発熱抑制についてⅡ種と同等、アルカリシリカ反応抑制も期待できますが、強度発現の点で配慮が必要なものです。
・主に、Ⅱ種(またはⅠ種)製造の際に、分級粗粉として回収されたフライアッシュです。生産拠点が限定されていますが、トンネル吹付けコンクリートの混和材として利用されています。 - 分級等処理を施さない状態のフライアッシュは「原粉」と呼ばれます。
- フライアッシュの品質に関するJIS規格は表に記載の規格のみであり、コンクリート用以外の用途でも本規格が指標として用いられているのが現状です。
(出典:日本フライアッシュ協会のホームページ)
表 コンクリート用フライアッシュの品質規定(JIS A 6201 - 2015)
フライアッシュ | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
Ⅰ種 | Ⅱ種 | Ⅲ種 | Ⅳ種 | ||||
二酸化ケイ素含有量(%)a) | 45.0以上 | ||||||
湿分(%) | 1.0以下 | ||||||
強熱減量(%)b) | 3.0以下 | 5.0以下 | 8.0以下 | 5.0以下 | |||
密度(g/cm3) | 1.95以上 | ||||||
粉末度c) | 網ふるい方法 (45μmふるい残分)(%) |
10以下 | 40以下 | 40以下 | 70以下 | ||
プレーン方法 (比表面積)(cm2/g) |
5000以上 | 2500以上 | 2500以上 | 1500以上 | |||
フロー値比(%) | 105以上 | 95以上 | 85以上 | 75以上 | |||
活性度指数(%) | 材齢28日 | 90以上 | 80以上 | 80以上 | 60以上 | ||
材齢91日 | 100以上 | 90以上 | 90以上 | 70以上 |
a)蛍光X線分析による場合は、その試験値に(XRF)と付記する
b)未炭素測定による場合は、その試験値に(炭素)と付記する。
c)粉末度は、網ふるい方法又はブレーン方法による。ただし、粉末度を網ふるい方法による場合は、ブレーン方法による比表面積の試験結果を参考値として併記する。
(出典:JIS A 6201-2015)
- 「JIS A 6201 コンクリート用フライアッシュ」に規格されるⅠ種品またはⅡ種品を、セメント会社においてセメントと混合し製造するフライアッシュセメント(セメント混合材用途)について、「JIS R 5213 フライアッシュセメント」が規格化されています。
- フライアッシュの混合割合により、A、B、C種の3種類があります。
- 現在流通しているフライアッシュセメントは、B種のみです。
表 フライアッシュセメントの品質規定(JIS R 5213 - 2009)
A種 | B種 | C種 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
フライアッシュの分量(%) | 5超え10以下 | 10超え20以下 | 20超え30以下 | |||
密度a)(g/cm3) | - | - | - | |||
比表面積(cm2/g) | 2500以上 | 2500以上 | 2500以上 | |||
凝結 | 始発(min) | 60以上 | 60以上 | 60以上 | ||
終結(h) | 10以下 | 10以下 | 10以下 | |||
安定性 | パット法 | 良 | 良 | 良 | ||
ルシャテリエ法(mm) | 10以下 | 10以下 | 10以下 | |||
圧縮強さ(N/mm2) | 3d | 12.5以上 | 10.0以上 | 7.5以上 | ||
7d | 22.5以上 | 17.5以上 | 15.0以上 | |||
28d | 42.5以上 | 37.5以上 | 32.5以上 | |||
化学成分(%) | 酸化マグネシウム | 5.0以下 | 5.0以下 | 5.0以下 | ||
三酸化硫黄 | 3.0以下 | 3.0以下 | 3.0以下 | |||
強熱減量 | 5.0以下 | - | - |
a)測定値を報告する
(出典:JIS R 5213-2009)