Q3:フライアッシュコンクリートの特長は?

【フライアッシュのポゾラン反応

  • フライアッシュをセメント混合材・コンクリート混和材として使用した場合、フライアッシュに含まれるガラス相(非結晶相(主成分:Si、Al))が、セメントの水和反応によって生成した水酸化カルシウム(Ca(OH)2)等と反応し、主にケイ酸カルシウム水和物(nCaO・SiO2・mH2O)を生成します。
  • 上記の反応をポゾラン反応と言い、ポゾラン反応の進行によってコンクリート組織が緻密化するため、コンクリートの強度や耐久性が向上します。
  • ポゾラン反応は緩慢であるが、長期的に反応が継続する。このため、フライアッシュセメントコンクリートは、長期強度が増大する傾向を示しています。

ポゾラン反応

標準的な品質のJISⅡ種品フライアッシュを使用した場合の、フライアッシュセメントコンクリートの特長を以下に示します。

【長期強度の増進】

  • ポゾラン反応の長期的継続により、セメントのみを用いた場合に比べ長期強度が増進し、耐久性の高いコンクリートとなります。
  • 養生温度をフライアッシュを少し高くした場合の強度は、フライアッシュを用いると著しく増進し、ポゾラン反応の効果がより発揮されます。

長期強度の増進

アルカリシリカ反応(ASR)抑制効果】

  • フライアッシュと高炉スラグを普通セメントに対して各々15%、42%置換混合したモルタルでASR抑制効果を比較した場合、セメントに対する置換率が低いフライアッシュの方がASRによるモルタルの膨張量を効果的に抑制できること*)等が示されている。ASR抑制目的では、フライアッシュを使用することが好ましい。

JIS A 1146法による膨張量比較/デンマーク法による膨張量比較
図 高炉セメント使用時の断熱温度上昇量 / 図 FAセメント使用時の断熱温度上昇量

(出典:広野・安藤・大代・鳥居:フライアッシュと高炉スラグ微粉末によるASR抑制効果の比較、セメントコンクリート
論文集 Vol.67、pp.441-448、2013.2)

【コンクリートの熱応力ひび割れ抑制効果】

  • フライアッシュセメントB種(20%置換)と高炉セメントB種セメント(40%置換)を比較した場合、10℃、20℃、30℃の条件下いずれにおいても断熱温度上昇量がフライアッシュセメントB種の方が低くなる*)。これは、マスコンクリート製造時の温度応力ひび割れを抑制するためには、フライアッシュを使用する方が好ましいことを示す。

高炉セメント使用時の断熱温度上昇量/FAセメント使用時の断熱温度上昇量
図 高炉セメント使用時の断熱温度上昇量 / 図 FAセメント使用時の断熱温度上昇量

注)凡例の200、300、400は、単位結合材料を示す
(出典:岸・前川:高炉スラグおよびフライアッシュを用いた混合セメントの複合水和発熱モデル、土木学会論文集
No.550/V-33、pp.131+143、1996.11)

【骨材のアルカリシリカ反応の抑制】

  • アルカリシリカ反応:骨材のある種の反応性シリカ鉱物は、セメントのアルカリ成分と反応し骨材表面に膨張性のケイ酸ソーダを生成します。この反応によって骨材周辺のセメントペーストが膨張圧を受け、コンクリートにひび割れが生じます。これが骨材のアルカリシリカ反応によるコンクリートの劣化です。
  • フライアッシュは、ケイ酸ソーダの生成反応を抑制する性質を有しています。
  • このため、フライアッシュをコンクリートに一定量以上混和することで、骨材のアルカリシリカ反応および、それに起因するひび割れを抑制する効果が得られます。
  • 「JIS A 5308 レディーミクストコンクリート」では、アルカリシリカ反応抑制効果を得たい場合、粉体全体(セメント+フライアッシュ)に対するフライアッシュの分量(%)を15%以上(フライアッシュセメントでは、B種の一部とC種が該当)とすることと規定されています。
  • 我が国では、反応性が無い良質な骨材の枯渇が問題となってきていることから、フライアッシュは今後の骨材需要問題に対応する有効な材料であると考えられています。

骨材のアルカリシリカ反応の抑制

【乾燥収縮の低減】

  • フライアッシュを混和したコンクリートやモルタルでは、フライアッシュの分量が増加するほど硬化後の乾燥による収縮率が小さくなり、ひび割れが生じにくいコンクリートとなります。また、建物の上塗用途としてもその特長を発揮します。

乾燥収縮の低減

【水和熱の低減】

  • フライアッシュを混和したコンクリートでは、コンクリートの水和熱が低減します。フライアッシュの分量が増加するほど、水和熱低減効果は大きくなります。
  • マスコンクリート工事、特にダム工事や原子炉格納容器等の製造において、フライアッシュセメントコンクリートは極めて有効です。
  • マスコンクリートの場合、フライアッシュを混和しないものに比べ材齢7日で6℃程度温度上昇量が低減されます。

水和熱の低減

【水密性、耐塩害性能、化学的抵抗性の向上】

  • フライアッシュを混和したコンクリートでは、フライアッシュのポゾラン反応の進行に伴い、コンクリートの硬化体組織が緻密化する。このため、水密性が向上します。
  • また、コンクリート内への塩化物イオンの浸透速度が低減するため、耐塩害性能が向上します。
  • さらに、ポゾラン反応の進行により、化学的に不安定な水酸化カルシウムの量が減少するため、硫酸塩、海水、薬液等に対する耐久性(化学的抵抗性)が向上します。

水密性、耐塩害性能、化学的抵抗性の向上

【ワーカビリティーの向上および単位水量の低減】

  • フライアッシュは微細な球形であるため、フライアッシュをコンクリートに混和するとフライアッシュがボールベアリングのような効果を発揮し、コンクリートのワーカビリティが著しく改善します。このため、コンクリートの型枠充填性が向上し、効率的な打設が可能となります。また、仕上がり面が滑らかで美しくなります。
  • また、同一スランプを得るための所要水量は、フライアッシュの混和率に比例して減少します。水量の低減により、緻密な組織を有する耐久性の高いコンクリートが得られます。
  • 近年は、フライアッシュ混和によるワーカビリティー向上効果を利用し、中・高流動コンクリートの製造にも用いられています。

※ワーカビリティ:まだ固まらないモルタルやコンクリートの、主に作業性の程度を表します。「ワーカブルなコンクリート」とは、程良い柔らかさを持ちつつ、材料分離しにくいコンクリートのことです。

【その他】

  • セメントは製造時に多量のCO2を排出する材料であることから、フライアッシュを混和しセメント使用量を低減することで、通常のセメントコンクリートに比べCO2排出量が少ない、炭素低排出型のコンクリートの製造が可能となります。

(出典:日本フライアッシュ協会のホームページ)